研削油と切削油はしばしば混同されがちです。業務で使用している方でも、厳密な違いを理解している方は少ないのではないでしょうか?
研削油は研削加工に欠かせない重要な役割を担っており、また用途により種類も適切に選ぶ必要があります。
この記事では、研削油の種類や作用について解説します。これから業務に携わる方はぜひ最後まで読んで理解しましょう。
目次
研削油は水溶性切削油のうちの一種
研削油は研削加工に使用される油剤であり、分類としては水溶性切削油剤のうちの一種です。
そもそも研削加工とは、研削砥石と呼ばれる研削工具で機械部品などの工作物の表面をわずかに削り取る技術を指します。研削により形状やサイズの細やかな仕上げが可能なため、精密な製品の作成に欠かせない技術です。
研削加工には種類が多数あり、円筒研削・内面研削・センタレス研削などを部品・部位によって変えて、求められる製品を作っています。いずれにせよ、表面を削るため、切りくずが発生することには変わりありません。切削加工と比較すると、研削加工は切刃が小さく周速度も高速であるため、切りくずも小さく精度も高いといった違いがあります。
研削油の役割・作用
研削油の主な役割は、潤滑・冷却・防錆・浸透・洗浄です。研削加工は熱と切り離せない作業のため、エンジンオイル等と重複する役割も多くあります。その中でも研削油ならではの特徴は「切り屑の洗い流す」作用にあります。
潤滑 |
潤滑作用により研削抵抗・摩擦を軽減し、機械の寿命の長期化にも寄与します。 |
冷却 |
研削加工では、砥石と工作物との接点が1,000℃を超えるほど非常に高温になります。高温になると研削焼けや割れが起こりやすくなるため、研削油による冷却作用が必要です。 |
防錆 |
加工直後の工作物は錆が発生しやすいものです。防錆作用により錆の発生を防ぎ、工作物のみならず機械等の保護にも役立ちます。 |
浸透 |
砥石と工作物の接点の近くに研削油を到達させる役割です。 |
洗浄 |
研削加工で生じる切り屑は、工作物や機械の傷つきにも繋がりかねません。洗浄作用により、切り屑を洗い流し、砥石の目詰まりも減らせます。 |
研削油の種類と選び方
研削油はソリューションタイプ・ソリュブルタイプ・エマルジョンタイプの3つに分類されます。3つのタイプは成分で分けられ、潤滑性や冷却性といった作用にも違いが生じます。
選ぶ際は、潤滑性と冷却性のどちらを優先するかがポイントとなるため、工作物の素材などを考慮して選ぶとよいでしょう。
特徴 | 用途 | |
ソリューション |
油分を含まない水溶性であり、見た目は透明から半透明。さらっとしています。 |
鋳鉄の切削、鋳鉄・鋼の研削。 |
ソリュブル |
ソリューションとエマルションの中間的な位置付け。 |
鋳鉄・非鉄金属・鋼の切削、研削。 |
エマルション |
不水溶性成分と界面活性剤からなる。見た目は乳白色。 |
鋳鉄・非鉄金属・鋼の切削のように潤滑性を要するもの。 |
研削油に関するよくある質問
ここまで研削油の概要を解説しました。ここからは、実際の作業場面でしばしば遭遇する困りごとや疑問をピックアップします。研削加工に携わる前にぜひご覧になり、理解しておきましょう。
研削油が泡立ってしまった時は?
研削加工を行っていると、「泡がなくならない」問題が度々生じます。
これは、砥石と工作物の間に研削液が入ってしまうことに原因があります。この泡立ってしまったものを放置すると、泡は増える一方です。
すぐにできる対策としては、消泡剤(シリコン)の使用が挙げられます。その名の通り、泡を抑えられる添加剤です。
また、研削加工の環境・条件により、研削油のタイプや製品の向き不向きがあるため、別の製品に変えれば改善される可能性もあります。
研削液の濃度の維持や管理はどうしたらいい?
研削液は希釈して使用する場合も多く、濃度の維持や管理は欠かせません。水溶性研削液の濃度の管理には濃度計が有効です。研削液の各製品により薄める水の量も異なるため、注意書きをよく確認しましょう。
濃度以外では、混入油による防錆作用の劣化が懸念されるため、防錆剤の使用も効果的です。
砥石の焼けを防ぐにはどうしたらよい?
研削作業では熱の発生により、工作物だけでなく砥石の焼け(研削焼け)が生じやすくなります。砥石焼けが起こると正常に研削ができなくなるため、出来るだけ避けたいものです。
砥石焼けを防ぐためには、研削面の熱をいかに逃すかが重要となります。研削油の量が不足していないか確認したり、適切な製品を使用したりすると、熱の発生をある程度抑えられます。
ほかにも、砥石の回転数や目詰まりの影響で砥石の切れ味が低下すると、概ね研削焼けにつながるため注意しましょう。
まとめ|研削油は切削油の一種で砥石焼け防止に重要な油剤
研削油とは研削加工に使用される油剤で、切削油の一種です。その役割はエンジンオイルと重複する部分があり、潤滑や冷却などの重要な作用を担っています。中でも特徴的なのは、研削で発生する切り屑を付着させない作用です。また、種類も大きく3つに分類され、用途によって適切に選ぶ必要があります。
研削加工ならではの泡立ちや濃度管理などの対策も忘れず行えば、円滑に研削業務に携われるはずです。研削油を理解し、トラブルなく加工作業を行いましょう。