「生分解性作動油の使用を検討しているが、自分の用途に合っているのか正直分からない」そんな悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
初めて作動油を使用する方にとって、どれが用途に適しているのかという点は非常に重要な問題です。
この記事では、作動油の基礎知識から生分解性作動油が通常のものとどのように異なるのかまで解説しているため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
そもそも作動油とは
作動油は油圧システムを最大限に活かすためのオイルです。主に、油圧システムの動力伝達媒体として使用されています。
その他にも、潤滑や防錆など、さまざまな役割を担っています。そのため、油圧装置を使用するうえで、必要不可欠な存在です。
今回解説する生分解作動油は、作動油の中の1種類にあたります。どの種類でも非常に重要な役割をになっているため、何を使用するかは慎重に判断する必要があります。
作動油の役割
上述した通り、作動油とは油圧装置で使用されるオイルです。油圧装置を正常に動かすためには必要不可欠で、作業効率に直結します。
そのため、作動油の選び方や日ごろのメンテナンスは忘れてはいけません。特に、適切なタイミングに交換しなければ油圧装置の寿命が縮むことも。
具体的に以下の役割を担っています。
- 動力の伝達:作業装置へ動力を伝達する
- 潤滑作用:油圧装置内を高速で作動する部品の摩耗を抑える
- 防錆作用:油膜を張り、錆の発生を抑える滑らかな稼働を支える
- 冷却作用:高速移動する部品の熱を吸収し部品の変形を防ぐ
各役割について詳しく解説します。
動力
最大の役割と言えるのが、動力です。作動油は動力の伝達を行っています。油圧装置のポンプからシリンダーまでを動かしているのです。
油圧装置はその名の通り、作動油が流れることで発生する力が動力となっているため、正しい種類を選ばなくては、油圧装置は正常に稼働しません。
そのため、粘度が重要となります。
潤滑
油圧装置内部は、常に金属パーツが摩擦を起こしています。使用すればするだけ、各パーツは摩耗していくのです。作動油はその摩耗を低減させる役割があります。
装置内部で正しく油膜を張っていれば、油圧装置の寿命を大きく伸ばします。
作動油には、さまざまな添加剤が含まれており、その添加剤の種類によっても、潤滑の精度は異なります。
防錆
油圧装置を構成する各パーツは金属でできています。そのため、雨や湿気の影響で、油圧装置は錆びてしまうでしょう。
作動油には、その錆の発生を抑える役割があります。油圧装置内部で油膜を張ることで、水分の発生や侵入を防ぐのです。
冷却
最後の役割が、冷却です。油圧装置の内部では常に摩擦が起きていることは上述の通りです。そのため、装置内部は非常に高温になります。
高温になりすぎると金属が変形するなど正しく動作するのが難しくなります。作動油は熱を吸収することで、装置全体の温度上昇を防いでいるのです。
生分解性作動油とは
分解性作動油とは、自然界に存在しているバクテリアが分解し、完全に無くなるという特徴を持ちます。そのため、自然環境に大変優しいオイルとなっており、近年世界で注目されているのです。
オイルは作業中であれば、どうしても漏れたり、シミ出たりして地面に落ちることがありますが、自然界にいるバクテリアで分解できる生分解性作動油なら安心して使用できます。
また、分解後は二酸化炭素と水になるため、自然界に与える影響は非常に低いのです。
しかしその反面、今でも使用されている鉱物系作動油にはない弱点があります。使用場面を選ぶため決して万能とは言えません。
そのため、ご自身がどのような目的で使用するのかを一度確認したうえで、生分解性作動油が使用できるかどうか、一度確認するようにしてください。
通常の作動油との違い
ここでは、生分解性作動油と通常の作動油(鉱物系作動油)との違いを解説します。
大きな違いは以下の通りです。
作動油の種類 | コスト | ゴム類への被害 | 引火点 | 防錆性能 | 自然への影響 |
生分解性作動油 | 高 | 有害 | 低 | 高 | 低 |
鉱物系作動油 | 低 | 無害 | 高 | 低 | 高 |
生分解性作動油の大きな特徴は、ゴム類への被害が大きい点です。万能ではないとお伝えしましたが、その最たる理由がゴムへの影響です。
また、耐摩耗性が低い特徴があるため、摩擦量が多い大きな負荷のかかる装置の場合は、生分解性作動油は使用しない方が無難と言えます。
しかし、その反面、自然環境への被害は非常に小さくなっています。世界中で自然環境への配慮がなされている今、使用できる環境なら生分解性作動油の選択も必要でしょう。
生分解性作動油の分類
生分解性作動油は、大きく2つに分類できます。
- 植物油を使用したもの
- 合成系基油を使用したもの
菜種油などの植物油を使用したものは比較的安価に入手が可能ですが、作動油としての性能は少し低く、使用する状況は限られています。
合成系基油を使用したタイプは劣化しづらく、高い性能をもちますが、ゴム類への影響が大きく、こちらも使用する状況が限られてしまいます。
生分解性作動油の価格について
生分解性作動油は、鉱物系作動油に比べ、コストが高くなります。そのため、いくら自然環境への影響が少ないとはいえ、なかなか普及が進んでいないのが現状です。
しかし、生分解性作動油を作成しているメーカーは、日々性能や価格の改良に努めています。今はまだ価格も高く、弱点もありますが、近い将来、デメリットを克服した高性能なものが登場することを楽しみにしましょう。
生分解性作動油に適した用途
現在では、自然環境に対して、作動油がどうしても漏れたり、垂れたりする環境での使用が多くなっています。木を切るために必要不可欠なチェーンソーですが、歯が高速で回転しているため、作動油の使用が必要不可欠です。
しかし、直接木に触れることもあり、かなり作動油が自然界に漏れ出てしまいます。そのような自然豊かな環境の中なら、生分解性作動油を使用することで、影響はかなり小さくできます。
まとめ | 生分解性作動油は自然に優しい作動油
今回は生分解性作動油について解説しました。自然界への影響が少ない特徴があり、今後さらに進化していくと考えられます。
ただし、作動油として使用するには心もとない性能でもあります。潤滑性が足りなかったり、ゴム類への影響が大きかったりと、注意点もいくつかあるからです。
しかし、今後の自然環境への配慮を考えれば、生分解性作動油の使用は必要不可欠と言えます。まずは、ご自身の用途に適しているかどうかを調べてみてください。