切削加工を行う際に、切削油剤が本当に必要かどうかわからない方も多いのではないでしょうか。また、種類が多くてどれを選べばいいか迷うケースもあるはずです。
そこで本記事では、切削油剤の種類や必要性について解説します。切削油剤についての理解を深めたい方は必見です。
目次
切削油剤とは
切削油剤は金属を切削するときの潤滑剤として使用されます。
水溶性と不水溶性の2つにわけられており、水溶性は高い冷却効果が期待でき、作業による引火の可能性が低い性質が特徴です。不水溶性はより高い潤滑効果が得られます。
水溶性切削油剤と不水溶性切削油剤は性質によって細かく分類されています。
希釈して使う水溶性切削油剤
水溶性切削油は、水で希釈して使用します。エマルション・ケミカルソリューション・ソリュブルの3つにわけられており、希釈後の色によって見分けられます。
A1種に分類されるエマルション
エマルションと呼ばれるA1種は、10~30倍に希釈して使い、希釈すると乳白色になります。
最も潤滑作用が高い特徴があり、性質によってさらに4つにわけられます。アルミニウム合金から鉄系金属や鉄系難削材、ステンレス鋼に使われるケースが多い傾向です。
A2種に分類されるソリュブル
ソリュブルと呼ばれるA2種は、10~50倍に希釈して使い、希釈すると透明もしくは半透明になるため、視認性が高いといえます。
ソリュブルはさらに、水に溶ける成分で構成されたもの、水に溶ける成分・溶けない成分から構成されているものの2つにわけられます。
エマルションよりも洗浄力や冷却効果は高いですが、潤滑作用は劣るのが特徴です。
A3種に分類されるケミカルソリューション
ケミカルソリューションと呼ばれるA3種は、30~80倍に希釈して使い、希釈後は透明になります。
ケミカルソリューションは基油を含んでおり、最も高い冷却作用が期待できます。しかし、ケミカルソリューションは潤滑作用がほとんどありません。
鉄鋼や超硬、ガラスの加工に使われるケースが多い傾向です。
原液のまま使う不水溶性切削油剤
不水溶性切削油剤は原液のまま使用し、取り扱いに注意が必要な危険物に分類されています。
性質の違いにより、4つの種類にわけられています。
N1種に分類される油性形
N1種の混成タイプは、油性形とも呼ばれています。N1種の成分は鉱油もしくは脂肪油で、金属同士がぶつからないようにし摩擦や摩耗を防げる点が特徴です。
焼き付きなどを防ぐ添加剤である、極圧添加剤を含んでいない特徴があります。
N2種に分類される不活性極圧形
N2種の不活性極圧形は、N1種に極圧添加剤を添加しています。N2種は銅板腐食が150℃で2未満のものが分類されます。
銅板腐食とは、磨いた銅板を切削油剤に1時間浸すとどのくらい変色するかを数字で表しており、数字が小さいほど変色しにくいことを意味しています。
N3種に分類される不活性極圧形
N3種の不活性極圧形は、N1種に硫黄分の極圧添加剤を添加したものです。
銅板腐食が150℃の状態で2以上、100℃で2以下のものと定められており、銅板腐食性が比較的強い特徴があります。そのため、N2種よりも銅板が変色しやすいといえます。
N4種に分類される活性極圧形
N4種の活性極圧形はN3種と同様に、N1種に硫黄分の極圧添加剤を添加しています。
銅板腐食が100℃で3以上のものと定められているため、不水溶性切削油の中で最も銅板腐食性が強く、変色しやすい特徴があります。
水溶性切削油剤と不水溶性切削油剤のどちらを使うか
切削油剤を使う時はどちらを使えばよいでしょうか。選ぶ際は、加工する金属の種類やどのように加工するかの2点が判断基準になります。
水溶性は水で希釈するため、錆びやすい性質があります。そのため、加工する金属が錆びやすいものは不水溶性、錆びにくいものは水溶性を選ぶとよいでしょう。
また、どのように加工するかによっても使い分けられます。不水溶性の方が潤滑作用が高いため、粗い加工は水溶性、高精度な加工は不水溶性が向いています。
切削油剤はなぜ必要?
切削油剤はなぜ必要なのでしょうか。その理由を明確にするためにデメリットとメリットについて解説します。
切削油剤を取り扱う際にはデメリットも理解する必要があるため、どちらもきちんと確認しておきましょう。
切削油剤を使うデメリット
以下のようなデメリットがあります。
- 金属が変色する
- オイルミストが発生する
適切な切削油剤を選ばなければ、金属が変色したり、錆びたりするケースもあります。そのため、金属に合わせて選びましょう。
また、切削油剤がミスト状に飛び散るオイルミストが発生する可能性もあります。オイルミストが床に飛び散り足元が滑るなど、作業環境の悪化につながります。これを防ぐために、オイルミストを除去するミストコレクタを設置しなければなりません。
切削油剤を使うメリット
メリットは以下のとおり3つあります。
- 潤滑作用
- 冷却効果
- 品質向上
潤滑作用はスムーズな切削作業を可能にし、生産性を向上させます。また、冷却効果によって切削時に発生する摩擦熱を減らし、使用する工具を長持ちさせる交換もあるのです。
さらに表面を綺麗に仕上げられるため、品質向上にもつながります。
このような多くのメリットがあるため、切削作業に切削油剤が使われるのです。
まとめ|切削油剤は用途に合わせて使いわけよう
切削油剤には水溶性と不水溶性の2つがあり、さらに細かく分類されています。それぞれ性質が異なるため、切削する金属や加工方法によって、使い分ける必要があるのです。
用途に合わせて適切な切削油剤を使用すれば、切削作業の助けとなるでしょう。