機械に使う潤滑剤としてグリースと潤滑油どちらを使用すればよいかわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、グリースと潤滑油の違いや種類を簡単に解説します。合わせてどのような用途に使うものかも紹介します。グリースと潤滑油を使い分けられるようになりたい方は必見です。
グリースと潤滑油の違い
グリースと潤滑油は、どちらも潤滑剤に分類されています。潤滑剤は、機械などをスムーズに動かすために使われています。摩耗や摩擦熱を防ぎ、機械を守ったり、製品の質を高めたりする働きがあるのです。
では、グリースと潤滑油はどのように違うのでしょうか。グリースと潤滑油は使われる場所も方法も異なります。しかし、1番大きな違いは形状です。グリースは半固体潤滑剤であり、潤滑油は液体潤滑剤に分類されます。
つまり、グリースはクリームのようにドロっとしており、潤滑油はサラサラしているのです。半固体潤滑剤には、グリースのほかにコンパウンドも含まれます。潤滑剤を形状でわけると、液体潤滑剤や半固体潤滑剤以外に固体潤滑剤のグラファイトなどもあります。
潤滑剤は基油と添加剤でできている
潤滑剤は、基油と添加物によって成り立っています。ベースとなる基油に、さまざまな性能を持つ添加剤を配合しているのです。添加剤には以下の役割を持つものがあります。
- 摩擦調整剤
- 粘度指数向上剤
- 清浄分散剤
- 流動点降下剤
- 酸化防止剤
- 防錆剤
- 消泡剤
これらをバランスよく添加し、潤滑油がその機能を果たします。また、グリースには増ちょう剤が含まれています。増ちょう剤は、基油を半固体状にする役割を果たすのです。これにより、グリースはクリーム状になっています。
グリースは4種類
グリースは大きく4種類にわけられます。それぞれ使用できる箇所や特徴が異なります。
種類 | 色 | 特徴 | 主な用途 |
マルチパーパスグリース | 緑・赤・薄茶色 | 最もメジャーで万能グリースと呼ばれている | 幅広い用途で使用可能 |
モリブデングリース | 黒 | 滑りが良い | 新車のエンジンやエンジンオーバーホール時 |
シリコングリース | 白・赤 | 樹脂やゴムに影響を与えにくい | 樹脂やゴム製の部品、パッキンの取り付け |
カッパーグリース | 茶褐色 | 銅成分が含まれている | ブレーキパッドやスイッチ類の接点用 |
このなかでもマルチパーパスグリースは幅広い用途で使用でき、成分によってさらにリチウム系とウレア系にわかれています。また、極圧添加剤が含まれるものやスプレータイプのものもあるなど、用途によって使い分けが必要です。
モリブデングリースは流れ出しやすかったり、カッパーグリースは使用方法に注意する必要があったりと、取り扱いが難しいものもあります。
潤滑油は11種類
潤滑油は主に11種類にわけられます。こちらもグリースと同様に、それぞれ特徴が異なります。
種類 | 特徴 | 主な用途 |
マシンオイル | 添加剤が含まれていない | 機械の軸受や回転摩擦部分 |
タービンオイル | 添加タービンオイルと無添加タービンオイルがある | タービンや高速軸受部分 |
スピンドルオイル | 粘度や荷重が低い | 軽荷重高速機や小型電動機などの高速軸受部分 |
ダイナモオイル | 高速で回転する大型の機械に使われる | 送風機や通風機 |
シリンダーオイル | 高粘度で温度や荷重の高い部分に使われる | 蒸気機関車のシリンダーや弁 |
軸受オイル | 防錆性が高い | 機械の軸受 |
冷凍機オイル | 鉱油系とアルキルベンゼン系にわけられる | 冷凍機 |
油圧作動オイル | 粘度が低い | 油圧装置の圧力媒体や油圧ポンプの作動油 |
ギアオイル | 極圧剤の有無で特徴が異なる | 機械の各種ギア |
圧縮機オイル | 酸化安定性や防錆性に優れる | 圧縮機のシリンダーや軸受 |
しゅう動面オイル | 振動への耐性や防錆性、酸化安定性に優れる | 工作機械のすべり案内面 |
マシンオイルは添加物が一切含まれていないため、潤滑油のなかでも幅広い用途で利用されます。原材料となる原油の種類によって性質が異なるのも特徴です。
タービンオイルは添加タービンオイルと無添加タービンオイルがあり、それぞれ性質が違います。添加タービンオイルは消泡性や防錆性、水分離性に優れており、無添加タービンオイルは水との分離性に優れているのです。
また、油圧作動オイルはタービンオイルをベースとして添加物を加えて作られています。
ギアオイルも極圧剤の有無によって異なる特徴を持っています。極圧剤を添加しているものは耐摩耗性や耐焼き付き性を持ち、添加していないものは酸化安定性や消泡性、防錆性、水分離性を持つのです。
ほかにも、圧縮機オイルはレシプロ用とスクリュー用にわけられていたり、しゅう動面オイルは案内面専用のものと油圧作動オイルと兼用のものにわけられていたりします。
このように、切削油は用途によってさまざまな種類があります。特徴も異なるため、適切なものを選ばなければなりません。
まとめ|グリースと潤滑油を使い分けよう
グリースも切削油も切削剤の1種です。その形状が半固体であるか、液体であるかによってわけられています。
さらに、グリースには4種類、切削油には11種類に分類されており、それぞれ用途が異なります。使用する際には適切なものがどれであるか理解し、選ばなければならないのです。