工業製品用の潤滑油にもさまざまな種類があり、それぞれ特長があります。潤滑油の正しい選び方を知るために、本記事では工業用潤滑油について解説します。
- 潤滑油の役割
- 潤滑油の種類と特長
- 潤滑油の粘度
記事を読むと、潤滑油に関する知識が身につき、機械にあった潤滑油を選べるようになります。
目次
代表的な工業用潤滑油の種類と特長
工業用潤滑油にもさまざまな種類がありますが、それぞれ特長が異なります。なぜなら、潤滑する場所や環境により、ベースとなる基油と添加剤の配合を最適なものにしているからです。潤滑油の役割と特長を理解して、使用する機械や部品に最適な潤滑油を選択していきましょう。
潤滑油の役割
潤滑油には金属と金属の間の摩擦や抵抗を低減し、焼き付き・発熱・破損などを防ぐ役割があります。
また潤滑油にはベースオイルと添加剤が含まれ、添加剤の効果により機械を適切な状態に保ったり、よりスムーズに作動させたりする効果があります。
適切な潤滑油の使用は自動車や機械の本来の性能を発揮させるため、機械の寿命も伸びますよ。
代表的な潤滑油の種類と特長
工業用潤滑油にはさまざまな種類があります。
使用される機械や潤滑油の使用目的に合わせて作られているので、それぞれ成分が異なり特長もさまざまです。
専用のオイルの使用は機械の長寿命化・スムーズな作動につながり、逆に不適切なオイルの使用は思わぬ不具合を起こす可能性があります。
潤滑油による違いを理解していただくために、工業機械に特化した潤滑油のうち代表的な9種類の特長を紹介します。
①マシン油
工業機械の回転部や軸受などに使用します。使用する温度環境によって、粘度の違うものを選ぶ必要があります。粘度はISO VG規格で記載され、数値が大きいほど粘度が高くドロドロしており、逆に数値が小さいほど粘度が低くサラサラしています。
②2スト用機械油
2ストエンジン専用のオイルで、ガソリンと混ぜて使用します。オートバイのほか、芝刈り機やチェーンソーなどに使用します。ガソリンと混ぜて使用するため、ガソリンへの溶解性がよいのが特長です。
③スピンドル油
紡績機のスピンドルのような、高速回転する機械の主軸に使用されるオイルです。使用する機械の指定粘度のオイルを使用します。高速回転部に使用するため、低荷重・低粘度なのが特長です。
④シリンダー油
主に蒸気機関エンジンなど高温・高負荷の環境で使用するための潤滑油で、粘度が高いのが特長です。引火点が高いので火が着きにくいですが、発熱量が多いので一度燃えると消火が困難です。
⑤軸受油
工業用機械の軸受部分(ベアリング)に使用されるオイルで、摩擦を減らし焼き付きを防ぎ、駆動の効率をよくします。軸受油には一般的に、酸化防止剤や錆止め剤が含まれ、機械寿命を長くします。
⑥冷凍機油
エアコンや冷蔵庫など、冷凍機の冷媒を圧縮するコンプレッサーに使用されるオイルです。アンモニアなどの冷媒と溶け合う性質を持ち、冷凍機の中を循環して各部を潤滑します。
⑦油圧作動油
油圧ポンプで生まれるエネルギーを、シリンダーやモーターなどに伝達するためのオイルです。使用環境の温度変化による粘度の変化が少ないのが特長です。潤滑性のほか、防食防錆性・消泡性などが必要です。
⑧ギア油
各種工業用機械の、ギヤの潤滑に使用されるオイルです。焼き付きや摩耗を低減するために極圧剤が添加されたものや、酸化安定性や消泡性にすぐれた無添加タイプのものがあります。
⑨しゅう動面油
工業用機械の、回転部や往復部に使用されるオイルです。添加剤が含まれていない場合が多いです。精度が求められる機械においては、摩擦を減らしスムーズに作動できるオイル性能が必要です。
潤滑油の粘度とは?
粘度とは、潤滑油など流体の「流れやすさ」を表す指標です。
粘度が大きいほどドロドロして流れにくく、粘度が低いほどサラサラして柔らかく流れやすくなります。
工業用機械の潤滑油においては、高負荷の環境で使用される潤滑油の粘度は高く、高速運動する部分で使用される潤滑油の粘度は低い傾向にあります。
潤滑油の粘度は温度環境によって変化し、高温の環境では粘度が下がり、低温では粘度が上がるのが特徴です。
使用する機械の温度・負荷・運動速度によって適切な粘度の潤滑油を選ぶことが必要になります。
適切な粘度の潤滑油の使用により、本来の潤滑油の機能を発揮できます。
粘度の規格
潤滑油の粘度を示す単位にはさまざまなものがありますが、現在主に使われているのは下記2つの規格です。
- SAE粘度分類
- ISO粘度分類
それぞれの表記方法を説明します。
①SAE粘度分類
米国自動車技術者協会(SAE)が定める粘度分類で、主に自動車用オイルの粘度特性を表すのがSAE分類です。
SAE粘度分類では一般的に、「5W-40」のように2つの数値で粘度を表します。数字は使用できる外気温の目安となり、オイルを選ぶ基準となります。
0Wから25Wが低温時で、20から60が高温時の粘度特性分類です。
「5W-40」のように低温時と高温時の両方を示しているオイルをマルチグレードオイルといい、四季を通じて使用できるのが特徴です。
数字の大きさが粘度の大きさを表している訳ではないので、注意しましょう。
②ISO粘度分類
40℃における潤滑油の粘度を表した指標で、主に工業用オイルの粘度指標として使用されているのがISO粘度分類です。
「ISO VG 100」のように表記され、分類は2から3200までの数値で、20段階で設定されています。
20段階の各数字の単位は動粘度を表す「mm2/s」なので、数字の大きさがそのまま粘度を表します。
数字が大きいほど粘度が高いため硬く、小さいほど粘度が低いため柔らかいです。
潤滑油の違いを知って適切なものを選びましょう
潤滑油にはさまざまな種類のものがあり、使用する部品や環境によって適正な潤滑油を選ぶ必要があります。粘度が合わなかったり添加剤が適していなかったりすると、思わぬ機械トラブルに見舞われる可能性もあります。
潤滑油の粘度を表す単位としては、SAE分類とISO粘度分類が一般的です。数字の表す意味を正しく理解して、適切な粘度の潤滑油を選びましょう。
種類や粘度の違いを理解して潤滑油を選び、機械や自動車が本来の性能を発揮できるようにしていきましょう。