油圧オイルは油圧機器を動かすのに欠かせない存在です。しかし、油圧オイルが具体的にどんなものに利用され、どうやって選ぶのかがわからない方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、油圧オイルの特徴や種類・選び方・保管や廃棄方法が学べ、油圧機器メンテナンスの悩みがなくなります。油圧オイルの正しい知識を身に付け、使いこなせるようになりましょう。
目次
油圧オイルの役割とは?
油圧オイルとは別名、油圧作動油とも言い、油圧装置の中で動力を伝達する媒体として使用されます。電気や水に比べて小さなシリンダで大きな力が出力でき、油圧を調整することで機械の力を制御しているのです。
例えば、車の運転で軽くブレーキを踏むだけで何トンもの車が止まるのは油圧オイルのおかげです。
さらに、動力伝達以外の作用も同時に行っており、それぞれの作用について下記にまとめました。
作用 | 詳細 |
潤滑 | 作動油に含まれる添加剤によって金造表面に油膜を形成し、油圧装置の摩耗を防ぐ。 |
防錆 | 油膜を張ることで酸素と金属が触れ合わなくしサビを防ぐ。 |
冷却 | 装置内部で発生する熱を冷却し、高温による故障を防ぐ。 |
油圧オイルは油圧装置の信頼性や作業効率に大きく関与するため、オイル選びは慎重に行う必要があります。
油圧オイルは大きく分けて5種類ある
油圧オイルは、石油系オイル(鉱物系オイル)・合成系オイル・水溶性オイル(含水系オイル)・生分解性オイル・高含水作動液の5種類に分けられます。
分類 | 主成分 | 種類 | 特徴 |
石油系オイル (鉱物系) |
石油 | ・一般 ・耐摩耗性 ・高粘度指数 |
・防錆剤(Rust Inhibitor)と酸化防止剤(Oxidation Inhibitor)が添加 ・頭文字をとってR&O作動油とも呼ばる |
合成系オイル | エステル ポリグリコール |
・リン酸エステル系 ・脂肪酸エステル系 |
・燃えにくい ・安定性や摩耗防止性がある |
水溶性オイル (含水系) |
水 | ・O/Wエマルション ・W/Oエマルション ・ポリグリコール溶液 |
・燃えにくい ・低価格 |
生分解性オイル | ・植物油 ・合成系基油 |
・微生物が分解できる ・環境にやさしい |
|
高含水オイル | 水90~95% + 鉱油や添加物を配合 | ・低価格 ・熱伝導率が良い ・燃えにくい |
油圧オイルの特徴は3つ
油圧オイルは油の力で機械を作動させるため、粘度や潤滑剤の添加などが重要です。ここでは油圧オイルの特徴を3つ紹介します。
- 気候によって粘度が変わる
- 添加剤が入っている
- 劣化する
以上、3つの特徴を把握することで油圧オイルを選ぶ際の指標になります。
特徴1:気候によって粘度が変わる
油圧オイルは寒冷地や寒い日にドロドロなり、熱帯地や猛暑日にはサラサラになります。適切な粘度で使用しなければ本来の力が発揮できないため、暖気や冷却を行うことが大切です。
特徴2:添加剤が入っている
油圧オイルには添加剤が入っています。酸化安定剤や耐摩耗性・防錆性の改善のために添加し、機械をベストな状態で使用できるような工夫がされています。
特徴3:劣化する
摩耗した金属片や水分の混入によって油圧オイルは劣化します。揚げ物に使う油も、水分の混入や揚げ物の残骸、温度によって色が変色する現象と同じです。
劣化した油圧オイルを使い続けると故障につながるため、定期的な交換が必要となります。
油圧オイルの正しい選び方
油圧オイルを間違えると機械の破損や故障につながるため注意が必要です。
参考文献:『出光「適油ガイドライン:工業用潤滑油」を基に作成』
まずは難燃性オイルか石油系オイルのどちらかを選びましょう。石油系オイルは、油圧が一定以上の場合や低温の程度で、耐摩耗性オイルや極低温用オイルを選択します。消防法対策のオイル・省エネオイルも存在するため、選択の幅が大きいです。
難燃性のオイルの場合はどのくらい高温で使用するかによって、水可溶性オイルか合成油系オイルに分けられます。一般的に石油系オイルを使用する機器は多く、機器の説明書をよく読んでから購入しましょう。
油圧オイルの保管と廃液処理
油圧オイルは適切な保管と廃液処理が必要です。保管方法は『消防法』によって定められ、廃液処理は『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』で定められています。
正しく安全な保管方法
油圧オイルの保管は直射日光を避け、湿気が少ない場所に保管しましょう。この条件であれば、未開封で10年以上品質が保たれます。
開封後1年以内であれば、品質に問題はありませんが、長期保管すると水分が入り込み品質が落ちてしまいます。ドラム缶は横にし、栓を油面より下にして水平におくと水分が混入するのを防ぎ、品質を保てるでしょう。
エステル系のオイルは吸湿性があるため例外となり、開封後はなるべく早く使い切ってください。
油圧オイルの処理方法
油圧オイルは一般排水には捨てられません。油圧オイルを購入した店舗で引き取ってもらうか、廃油処理箱に入れて産業廃棄物として処理しましょう。
自治体によってエンジンオイルや油圧オイルなどを処分してもらえないことがあるため、はじめに確認してから購入してください。
自治体で処理ができない場合は、専門の引取り業者や購入した店舗に持っていきましょう。
まとめ|油圧オイルの知識を身に付け、正しい使用方法を理解すること
油圧オイルとは油圧機器を動かすためには欠かせない液体です。人間で言うと油圧機器は心臓、油圧オイルは血液と同じだといえます。
正しい知識と使用方法を身に付け、最適な油圧オイルを選択し、適正な状態で管理できるようにしましょう。