潤滑油

水溶性切削液の基本! 切削油の種類と特長・水溶性と油性の違いを徹底解説!

水溶性切削液は使い勝手がよく、コストパフォーマンスに優れた切削油剤です。しかし「どの切削液を使えばいいのか」「切削精度や維持管理はどうなのか」といった疑問もあるのではないでしょうか?

この記事では、水溶性切削液の特長や種類、不水溶性との違いを解説しています。切削油剤の選択に悩まれている方は、ぜひ参考にしてみてください。

水溶性切削液とは?

水溶性切削液は、金属の切削加工に使う潤滑油を指します。

以前は金属の切削加工には、油性の潤滑油が主流でした。しかし、大量生産化が可能になり切削工具の精度が上がったこと、経済性や安全性などの点で水溶性の需要が高まりました。今後も、環境問題に対応しつつ高性能でコストダウンとなる切削油剤が求められるでしょう。

水溶性切削液の特長

水溶性切削液の大きな特長は、何といっても水に希釈して使うことです。水に混ぜずに使用する不水溶性切削液のデメリットをカバーする特長を持っています。

定期的なメンテナンスは必要ですが、使い勝手の良さには代えられません。水溶性切削液の特長は下記の4つです。

  • 冷却性
  • 潤滑性
  • 洗浄性
  • 防錆性

それぞれ解説します。

冷却性

切削の際、切削温度は1,000°まで上昇することもあります。温度が上昇すると、工具や工作物が熱により膨張・変形して、加工精度が落ちてしまいます。

場合によっては、高温になった切削の切りくずが、火災の原因になりかねません。水溶性切削液を使うことで、切削の温度上昇を抑えられ、無人の機械加工でも火災のリスクが低くなります。

潤滑性

切削加工では、工具と工作物の摩擦を減らして切削の精度の向上が求められます。切削液がないと金属同士が直接接触し、接触面には大きな力がかかることで、工作物の品質が落ちる場合も。そのため切削液を使用して、接触面の摩擦を小さくすることで、工具の切れ味を良くしたり工作物の精度を上げたりします。

洗浄性

切削時には発生した切りくずが切削機械に詰まったり、工具や工作物を損傷させたりすることがあります。場合によっては、高温になった切りくずが原因で火災が発生する可能性もあるでしょう。

そのため、切削時の切りくずを洗い流す必要があります。水溶性切削液は、洗浄作用だけではなく、切りくずの飛散を防ぎ、職場環境を清潔に安全に保つ効果も期待できます。

防錆性

切削後の工具や工作物は、水や酸素に反応して錆やすい状態になっています。切削液を使えば、工具や工作物の表面に油膜を形成し、酸化するのを防ぎます。

ただし、防錆性に関しては不水溶性切削液の方が優れている点を覚えておきましょう。そのため、水溶性切削液の種類や性質、工具類の定期的なメンテナンスなどを考慮しなければなりません。

水溶性切削液の種類

水溶性切削液は、取り扱う切削加工によって適切なものを選ばなければなりません。

下記の3種類ごとに特性が異なることを理解しましょう。

  • A1種(エマルジョン)
  • A2種(ソリュブル)
  • A3種(ソリューション)

それぞれ解説します。

A1種(エマルション)

3種類の中で最も潤滑性に優れている油剤です。重切削まで使用できるため、切削加工全般に向いています。

適用される加工例としては、非鉄・鋳鉄・鋼の切削や研削加工など。高い潤滑性と防錆性が特長ですが、機械の汚れやベタキツなど、定期的なメンテナンスが必要になります。水で希釈すると、見た目が乳白色になる特徴があります。

A2種(ソリュブル)

3種類の中で、冷却性・潤滑性が標準レベルの油剤です。界面活性剤など水に溶ける成分、もしくは水に溶ける成分と水に溶けない成分からなり、切削から研削まで幅広い用途での使用に向いています。適用される加工例としては、非鉄・鋳鉄の切削加工、鋼の研削加工など。水で希釈すると半透明・透明になります。

A3種(ソリューション)

3種類の中で最も冷却性・消泡性に優れ、加工速度が高速の研削加工に向いている油剤です。ただし潤滑性が低いため、工具と工作物の摩擦が大きい切削加工には向きません。適用される加工例としては、鋳鉄・鋼の研削加工など。水で希釈すると透明になるため、加工面の目視確認がしやすくなります。

水溶性と不水溶性の違い

以前は不水溶性切削液が主に使われていましたが、時代の変化から水溶性切削液が重宝されるようになりました。だからといって、水溶性切削液がすべてにおいて優れているとは限りません。

それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

水溶性

水は油の2倍の非熱処理能力があり、同等の容量なら油の倍の熱を奪えます。さらに、水の蒸発時の吸熱能力は非常に大きく、切削時の摩擦熱を下げてくれます。

しかし、水で希釈して使う性質上、工具や工作物、工作機械など錆の発生には注意が必要です。

不水溶性

不水溶性切削液は、摺動性や浸透性に優れ、錆に強い特長があります。潤滑性能も優れているため、切削精度が高く、仕上がり品質に不安がありません。水を使わないため錆の心配はありませんが、火災の発生や床・機械が汚れやすくなるデメリットがあります。

まとめ|切削液の特徴を知って適切に使い分けましょう

水溶性切削液は、切削加工には欠かせない切削油剤です。錆に対する管理は必要ですが、環境に優しくコストダウンにも繋がります。取り扱う切削加工に合った切削液を選んで、コストパフォーマンスの良い切削加工をしましょう。

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