モーターを使ったり物を加工したりなどの機械を使用する仕事をしている方であれば「工業用オイル」を使う機会があるかもしれません。
工業用オイルにはさまざまな種類があるため、どれを使えばよいのか迷ってしまうケースがあるでしょう。
この記事では、工業用オイルの粘度とは何か、用途ごとの選び方について解説します。
目次
工業用オイルの役割
工業用オイルには、金属同士の摩擦や抵抗を抑え、焼き付き・発熱・損傷などを防止する役割があります。
また、オイルに含まれているベースオイルや添加剤によって、機械内部をクリーンな状態に保ったり、動作をスムーズにしたりする効果があります。
粘度とは
粘度は、オイルの働きにおける最も重要な性質と言われており、流体の「粘り気」を数値で表したものです。
一般的に、粘度を表す際は「粘度指数」が用いられます。数値が低いものはサラサラしており、流れやすい特徴があります。逆に、数値が高いものはドロドロしており、流れにくい特徴をもつのです。
粘度指数を示す単位にはさまざまな種類があります。一般的に使われている規格の分類を、以下の2項目に分けて解説します。
- ISO粘度分類
- SAE粘度分類
ISO粘度分類
ISO粘度分類は、オイルの40℃使用時における粘度指数を指します。主に工業用オイルの特性を表す際に用いられるケースが多いでしょう。
「ISO VG 100」のような形式で表記され、右側の数値には2~3200の間の20段階のいずれかの数値が入ります。単位は「㎟/s」。数値が大きくなるほど、粘り気が強くなることが分かります。
SAE粘度分類
SAE粘度分類は、米国自動車技術者協会(SAE)が決めた粘度分類です。主に自動車用オイルの特性を表す際に用いられるケースが多いでしょう。
「10W-60」のような形式で表記され、使用できる温度の上限と下限が分かります。「10W」の部分が低温時、「60」の部分が高温時の特性です。
SAE粘度分類の表記に使われる数値はISO粘度分類と違い、粘度指数を表すものではない点に注意しましょう。
工業用オイルの種類と特徴
工業用オイルには、用途に応じてさまざまな種類があります。本来の用途と異なる種類を使用すると、機械の不具合や故障につながる可能性があります。そのため、粘度特性を知り、適切な種類選びをする必要があるでしょう。
チェーンソー用機械オイル
チェーンソー用機械オイルは鉱物由来のもので、ISO VG100程度の高粘度が特徴的です。高速回転するチェーンに付着し、金属同士の摩擦を和らげる効果があります。
また、リーズナブルな価格で、大容量タイプが多い点も魅力の1つでしょう。
コンプレッサー用機械オイル
ISO VG68程度で、比較的粘度が高めです。コンプレッサー内部の金属接触を防止する用途で使用されるケースが多いでしょう。
また、コンプレッサー本体の熱を吸収する役割も果たします。
2サイクルエンジン用機械オイル
マシン用機械オイルは、コンプレッサー用機械オイルと同じくISO VG68程度です。刈払機・芝刈機・チェーンソーの2サイクルエンジンに使用される専用タイプです。混合燃料を作る際に使用されます。
マシン用機械オイル
ISO VG46程度で、オイルの中では中程度の粘度です。金属加工時などに機械の摺動面(しゅうどうめん)に使用されるケースが多いでしょう。軸受・歯車などの金属摩耗や、油圧装置の動作不良、潤滑不良などを防止する効果があります。
タービン用機械オイル
タービン用機械オイルの粘度指数は、低めのISO VG32程度です。油圧装置や高速回転部の潤滑油など、幅広い用途で使用されます。
スピンドル用マシンオイル
ISO VG10〜20程度で、工業用オイルの中では粘度が低い特徴があります。主に高速で運動している部分に使用される種類です。また、低荷重で稼働する機械に使用されるケースもあるでしょう。例えば、小型モーター・ミシン・縫製機などで使用されます。
粘度管理の方法
工業用オイルは、温度変化にしたがって粘度も変化します。基本的には、温度が上がると粘度が低くなり、温度が下がると粘度が上がります。
機械に使用するオイルの選び方や負荷・運動速度も重要ですが、温度管理も同じように重要な要素です。機械が本来の機能を発揮できるように、適切な温度管理を心がけましょう。
工業用オイル粘度の選び方と利用方法
オイルの種類を選ぶ際は、機械が指定する粘度指数に合わせて、ISO粘度分類を基準に選ぶ必要があります。また、機械の使用状況や温度環境の幅などを確認することも忘れないようにしましょう。
一部例外がありますが、基本的には異なる種類を混ぜてはなりません。適切な使用方法を守ることが、機械を不具合や破損から守ることにつながるでしょう。
まとめ:工業用オイルは機械に合った粘度を使おう
工業用オイルには、機械の発熱・破損などを防ぐ役割があります。
オイルを分類する指標の1つに「粘度」があり、使用する機械によって適切な粘度指数が異なります。
工業用オイル使用の際は、負荷や運動速度のほかに、温度管理にも気をつけるようにしましょう。